天才遺伝子

2015年06月25日

わが子が変わる! アメリカ発「天才遺伝子の育て方」

プレジデントから引用   2015年6月20日



天才をつくるのは、遺伝か環境か──。長く続くその論争に全米注目のスポーツ科学ジャーナリストが答える。最新の遺伝子研究とスポーツの観点から、子どもの才能に迫る。



■天才遺伝子に惑わされる、早期英才教育の危険性

 残念ながら、今ブームになっている遺伝子検査はそれほど万能ではない。国を代表するトップレベルのアスリートが、トレーニングの成果に決定的に影響する遺伝子をもっているかどうかを検査することは重要だろう。だが、一般人向けの遺伝子検査はまだまだ未完成で、そのほとんどが企業の情報収集か金儲けを目的にしている。

 あなたの子どもに特定の能力に秀でている遺伝子が見つかったとしても、その能力を形成する遺伝子のほんの一部が見つかったにすぎないのだ。つまり、そうした一般向けの遺伝子検査の結果は、実際にその遺伝子情報に従って子どもの習い事やトレーニングを今すぐ限定していくほどの情報ではないということに気付いてほしい。

 日本でも子どもが幼いうちに遺伝子検査を受けさせて、短距離に向いている遺伝子が見つかれば、それに特化して訓練させるのがベストであるといった間違った考えをもつ親がいるのではないだろうか。著書“The Sports Gene”(邦題『スポーツ遺伝子は勝者を決めるか? 』)を2013年に上梓してから、全米のトレーナーやチームからも遺伝子検査について多くの質問を受けてきた。

 プロテニス選手のロジャー・フェデラーの親は、彼が小さい頃にバドミントン、バスケットボール、サッカーなどいろいろなスポーツを体験させ、テニスに絞らせたのはずっと後だった。スティーブ・ナッシュというNBAバスケットボール選手も13歳までバスケットボールを触ったことがなく、12歳まではそれ以外の様々なスポーツを楽しんだそうだ。身長はそれほど高くないにもかかわらず、MVPを2回獲得しているほど優秀な選手となっている。

 これらの一流選手の例からも言えるように、12歳くらいまでは様々なことを試す時期と位置付けることが重要なのだ。10歳の一流選手をつくる必要はない。20歳で成功すればいいのだ。実際に、早期に子どもの専門を絞りすぎることで、その才能を伸ばせず、失敗した例がアメリカで多く報告されてきた。

 だから、子どもに遺伝子検査し、短距離に向いていることがわかったとしても短距離だけに特化して訓練することはやめたほうがいい。

 これはスポーツだけではなく、音楽にも当てはまることがわかっている。早期に一つの楽器に集中するのではなく、いろいろな楽器をやることで最終的に自分に合った楽器が見つかり、幼い頃から練習していた人を軽く凌駕することはよくあることだ。



■“コツコツ努力で成功”根性論が天才をつぶす

 早くに道を限定しない環境は大事である。一方で、子どもの才能をつぶさないもうひとつの重要な点は、時間さえかければ必ず一流になれるわけでもないということだ。「どの分野でも1万時間訓練すればプロになれる」という“1万時間神話”がスポーツの世界ではまことしやかにささやかれている。

 過去に、オーストラリアで実際にこの1万時間神話を信じ、実行しているサッカー・コーチに会ったことがある。そのコーチが最初にやったことは、八歳の子どもに対してサッカー以外のスポーツを禁止することだった。これはまさに早期に専門を絞ることの危険性を体現しているような状態だった。

 ところが調べてみると、この1万時間という数字は、実は30人程度の音楽アカデミーのバイオリニストへの調査から導き出されたものだった。しかも、調査の母体はすでにトップレベルにある人たち。これでは、神話がバイオリニストになりたい多くの子どもたちの現実となることを証明はできない。

 現実には、個人差がかなりある。3000時間で国際的なレベルに達する人もいれば、2万5000時間訓練してもそのレベルに達さない人もいる。平均的な数字にとらわれると、個人差を理解するときの障害になってしまう。1万時間訓練したので、そのレベルに達しているはずだ、という錯覚に陥る。それを自分の子どもに強いることは、非常に危険なことなのだ。


■才能を伸ばすなら選択肢をオープンに

 私が調査してきたスポーツ科学と遺伝子の関係からわかったことは、子どもの成功は長期的な視点で見なければならないということである。早期に訓練を受けた子ども、特に女の子は、ほとんどが16歳になるまでにその分野から離れてしまっているというデータもある。

 「将来一流になるのなら、早くに芽が出るはず」、という思いは捨てるべきだ。自分の子どもが優れていることが早くに明確にならないことは、親からすれば不安かもしれない。しかし、子ども自身は親が与えた道にのっているにすぎず、これから広がる可能性のある道を親が狭めてはいけないのだ。

 子どもを伸ばすもうひとつのキーワードは“暗黙的学習”だ。これは言語を学ぶときに文法などの説明を受けて学んでいく“明示的学習”に対して、周囲の人が話す言葉などをシャワーのように浴びる中で習得するという方法を指す。子どもは文法を教えられなくても、周囲の人の言葉を聞いて育つ中で、その言語を習得し話し始める。文法などを教えて正しく使えるように修正していくのは、話せるようになったずっと後からでかまわないのだ。

 これをスポーツに適用すると、子どもに対して最初から絞ったことを教えるよりも、多様なスポーツに挑戦させ、専門的で技術的なことをあとから教えるということだ。しかし、実際には先に技術を教えてしまうことが多い。その結果、子どものポテンシャルを破壊してしまう結果になってしまうのである。

 将来の“一流”を育てるには幼いときの広い選択肢が必要である。これまで信じられていた天才の育て方と反対であっても、耳を傾けてもらえたらうれしい。


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スポーツ科学ジャーナリスト
David Epstein(デイヴィッド・エプスタイン)
米国出身。 コロンビア大学大学院修士課程修了(環境科学、ジャーナリズム専攻)。「スポーツ・イラストレイテッド」誌のシニア・ライター。同誌でスポーツ科学、医学、オリンピック競技の調査報道を担当し、記事での受賞歴も多数。学生時代は、中距離走の大学代表選手として活躍。著作『スポーツ遺伝子は勝者を決めるか? 』(早川書房)。



enmusubi5 at 17:32コメント(0) 

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